2019-01-23

「ランキング」考 ― 石坂 昌弘 教授

 東洋経済新報社が全国の都市を対象に「住みよさランキング」を毎年公表しています。東洋経済新報社によると、日本全国の市区について、公的な統計を基に、「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」「住居水準充実度」の5つのカテゴリーに分類しランク付けしています。16の統計指標を基に、指標ごとに平均値を50として偏差値を算出し、部門別評価及び総合評価を行っています。昨年の6月に公表された「住みよさランキング2018」の結果によると、2018.6.14現在の全国814都市(東京23区を含む)の総合評価1位は7年連続の千葉県印西市、2位は愛知県長久手市、3位は宮城県名取市でした。印西市は千葉ニュータウンの中核地区がある新興都市で成田空港から近いなど、快適度や利便度が高く総合1位となりました。因みに群馬県の総合上位をみると、太田市の89位が最高で、2番目が高崎市の170位、3番目が前橋市の218位でした。カテゴリー別にみると、3市とも住居水準充実度、安心度及び利便度が低い一方、富裕度及び快適度に高い傾向が見られました。

 住みよさを考えるに当たっては、何を重視するかによって個人個人の評価が違うのは当然ですが、今回は太田市が富裕度群馬県最高順位(全国63位)だったこともあり、「富裕度」に着目してみました。まず、富裕度トップは東京都の千代田区でした。皇居を始め、永田町・霞が関、丸の内・大手町、神田・秋葉原など様々な顔を持つ千代田区は、東京だけでなく日本の政治経済の中心であることの反映ではないかと思われます。トップ30の内、11位まで全て東京都、またトップ30の内、何と19が東京都でした。まるで一極集中を象徴しているかのようです。次に多いのは愛知県の7、後は千葉県1、神奈川県1、埼玉県1、兵庫県1でした。すなわち、東京都と愛知県の2都県でほぼトップ30を独占しているといっていいと思われます。

 ところで、「住みよさランキング」の「豊かさ」に用いた指標は次の3つです。①財政力指数②地方税収入額(人口当たり)③課税対象所得(納税義務者1人当たり)です。それぞれ総務省が全国の市区を個別に調査したもので、公的機関のデータであることから、信ぴょう性は髙いと考えられます。その一方、わずか3つの指標で評価できるのだろうか、個人的には若干疑問が残るところです。財政力指数は地方公共団体の財政力を表す指数で、数値が高いほど財源に余裕があるということになります。東京23区には大企業の本社が集中していることなどから、税収や所得も多いことが推測されます。

 さて、同じ総務省から同じ時期に、「小売物価統計調査2017年(平成29年)結果」が公表されました。この調査では都道府県や県庁所在地の物価水準が分ります。
 この調査によると、物価水準が最も高いのは東京都、最も低いのは群馬県で、東京都の物価水準は、群馬県と較べて8.5%高い結果となりました。都市で最も高いのは川崎市、最も低いのは前橋市でした。東京都や川崎市は住居費が高く、物価が高くなるのは何となく想像がつきますが、群馬県(前橋市)の物価が全国一低いというのは意外ではないでしょうか。いくら収入が多くても、物価が高ければその分は相殺されます。

 世の中では様々なランキングが公表されています。ランキングの種類・目的は様々ですが、根拠となる情報やデータはどうしても限られてくるので、実態を正確に表しているかどうか考えてみる必要があります。今回の富裕度にしても、物価のほか世帯の貯蓄額や負債額などを指標に入れたらランキングが変わるかもしれません。かといって、今回の調査を軽視すべきものでもありません。指標の取り方によって変動があるにしても、実態を反映していることには違いがないからです。いずれにしても、調査結果を鵜吞みせずまずは疑ってみる、そして調査方法や指標等よく確認した上で評価する、これが大切です。

以上