2017-10-05

オリンピックが原因で加速する?東京都の領土問題 ― 柴崎 直孝 講師

 東京オリンピックまであと3年。世界的スポーツの祭典は,スポーツだけではなく様々な分野に影響を与えます。今回紹介する問題もまた,東京オリンピックによって脚光を浴びることになりました。

 読売新聞9月29日夕刊によると,東京湾の人工島「中央防波堤埋立地(以下,中防)」の帰属問題で,東京都が調停案を内示し,問題解決へ前進したとありました。

 そもそも「中防の帰属問題」とは何なのか?

 「中央防波堤」とは,東京都台場の沖合にある防波堤のことです。1973年から防波堤付近が廃棄物処理場となったため埋立地となり,「中央防波堤埋立地」となりました(したがって,現在は防波堤と土地が一体化しています)。高度経済成長期を経て暮らしが豊かになると同時にゴミの量が爆発的に増加し,埋め立てのペースは急ピッチで進みました。そうした背景もあり,関係五区(江東,大田,品川,港,中央)において最終的な帰属先が決まらないまま埋め立てがスタートしてしまいました。これが40年以上経ってもいまだに解決されない「中防の帰属問題」の始まりです。なお現在,中防の場所は「東京都江東区青海3丁目地先・・」と暫定的に呼んでいます。「地先(その場所の近く)」なので江東区ではありません。もちろん大田区でもなく,住所がない状態です。

 2002年に品川,港,中央の三区は帰属の主張を取り下げ,現在は江東区と大田区が争っています。ちなみに,両区の主張は以下の通りです。

江東区:埋め立てのための運搬車が区内を通り,住民が悪臭,渋滞に悩まされてきた。

大田区:埋め立ての影響でノリ養殖の漁業権を放棄した。

 話し合いは平行線で,両区とも全島帰属を主張しているので解決の道が見えませんでした。ところが2017年になり両区は東京都に調停を申請しました。つまり,第三者の意見を仰ぎ,40年も解決しなかった問題を決着させようとしたのです。

 その理由が東京オリンピックにあります。中防の土地は馬術(海の森公園),ボート,カヌー(海の森水上競技場)の会場予定地だからです。周辺開発の期待が高まり,利権問題に発展したのです。話は逸れますが,東京都では過去に「東京港13号地埋立地」という埋立地でも帰属問題が発生しました(そのときは江東区75%,港区17%,品川区8%でまとまりました)。この13号埋立地が現在のお台場地区だということを考えると,中防地区においてもオリンピックまでには決着をつけたいことが伺えます。

 報道によると,専門家で構成された自治紛争処理委員は,両区が主張する「全島帰属」は根拠がないと判断し,両区の護岸から中防までの距離が等しくなる点を結んだ等距離線をベースに分割することにしました。その結果,江東区は86%,大田区は14%となりました。ちなみにオリンピック会場は全て江東区に含まれます。9月30日読売新聞朝刊によると,この調停案に対し,江東区は受諾の意思を示し,大田区は反発したそうです。調停が成立しない場合は,訴訟を提起することもできます。オリンピックまであと3年。どのような決着を迎えるのか気になるところです。