2018-12-14

漫画業界から見える現代社会の闇 ― 柴崎 直孝 准教授

 もうすぐ40歳になろうというのに,いまだに漫画が大好きです。よく,大事なことは教科書よりも漫画から学んだなんて言う人がいますが,まさしく私のことです。

 私のことはいいとして,先日,長期間にわたり連載をお休みしていた漫画が連載を再開するというニュースがありました。原因は体調不良であったみたいです。最近漫画家さんの長期休載のニュースが多いです。さらに訃報も多く聞くようになりました(しかも若くしてお亡くなりになっているケースが多い)。このことから漫画家は激務であり,何らかの疾病を抱えやすい職業であることがわかります。具体的には,長時間描くことからくる腰痛,腱鞘炎,眼精疲労,運動不足,睡眠不足などの肉体的なものから,締切,ファンの期待,打ち切りの恐怖などプレッシャーからくるストレスといった精神的なものまで様々です。働き方改革が言われて久しいですが,漫画家の方こそ働き方を改革するときなのではないでしょうか。これに対し2人の漫画家がある試みを行いました。

 「みどりのマキバオー」や「モンモンモン」でおなじみのつの丸先生が電子マンガアプリ「ジャンプ+」にて「ギャグマンガ家 人間ドックデスレース」を連載しました。内容は漫画家仲間と一緒に人間ドックへ行き,診断結果を漫画で公表するというものです。つの丸先生曰く,この企画を思い立った理由がやはり漫画家の労働環境にあったようです。同時連載,入院中の執筆,連続徹夜など「外の社会ならただのブラックエピソード」を逸話や伝説のように崇める傾向にあるため,自分も同じように頑張らなくてはと働きすぎてしまい無理がたたって体を壊してしまうケースが多くあるため,「これからあとに続くマンガ家たちのためにも」「オレたちでこのマンガ家早死にの時代を…終わらせなきゃならないんだ…」という決意で連載されたようです。ギャグマンガ家らしくユーモアたっぷりに描かれていましたが,働きすぎの現代社会に警鐘を鳴らす作品に仕上がっています。

 もう1人は「ドラゴン桜」「クロカン」でおなじみの三田紀房先生。現在「ドラゴン桜2」と「アルキメデスの大戦」2つを連載している人気作家ですが,アシスタントは週休3日で残業は禁止にしています。多くの人が抱く漫画家のイメージとは真逆の労働環境です。しかし,残業がないことで集中して働けるし,無駄な時間を省いてその分仕事に充てることで休日が増えるなどメリットほうが多いです。さらに「ドラゴン桜2」に関しては作画をデザイン会社に外注してしまうという前代未聞の取り組みをしています。コストはかかるものの,作画にかけていた時間をストーリー作成や取材に充てられるので効率性が増したようです。何より健康面での負担軽減が大きいでしょう。

 今回の話は漫画業界をスポットに当てて書きましたが,私たち一般人にも当てはまるところは多いです。2人の漫画家のマネをすることは出来なくてもそれに近いことはできるはずです。例えば私の場合,最近残業しがちだったのですが,スマホをいじったりして集中していませんでした。それもあってこの先週1週間絶対に残業をしないで18:30に帰宅する!と決めたのですが,やはりその方が集中できて効率が良かったです。また,三田先生のように外注はできませんが1人で抱え込まず仲間に相談し仕事を分担することもできます。健康第一で仕事を頑張る,当たり前のことですが忘れていたものを教えてくれた2人の先生でした。

参考文献
「ギャグマンガ家 人間ドックデスレース」
「週休3日、残業禁止、「作画完全外注」――漫画家・三田紀房が「ドラゴン桜2」で挑む働き方改革」