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2009年5月

2009年5月28日 (木)

フェルプスが抱えた新しいメッセージ

経済学部講師 石坂友司

 オリンピック北京大会で前人未踏の8冠を達成した競泳のマイケル・フェルプス(米国)が、今月の競技会に登場し、5種目中2種目で優勝した。しかしながら、このニュースは2012年のロンドン大会に向けて順調なスタートを切ったというものではなく、過ちからの再出発を報じるものであった。今年の2月、彼は大麻吸引の疑惑が報じられ、米国水泳連盟から3ヶ月の出場停止と強化費支給停止処分を受けていた。

 フェルプスは昨年11月に行われた大学のパーティーで大麻を吸引したと報じられた(正確に書けば、通常大麻の吸引に使われるパイプに口をつけている写真が掲載された)。フェルプスは早々に不適切な行為であったことを謝罪し、事実上吸引を認めている。ただし、彼自身が吸引を明言していないこと、吸引器の所持だけでは罪にならないなどの理由から、警察は証拠不十分として立件を見送った。

 大麻は世界反ドーピング機関(WADA)の禁止薬物に指定されているものの、処罰対象となるのは競技期間中に陽性反応が出た場合だけに限られる。従って今回のケースはメダル剥奪の処置には当たらない。ではなぜ米国水泳連盟は上記のような処分を下すことができたのであろうか。連盟の言い分はファンや関係者を失望させたこと、だそうである。

 フェルプスは、金メダルを獲得した2004年のアテネ大会後に飲酒運転で逮捕された経歴をもつ。汚名を返上した北京大会の活躍によって、彼のもとにはスポンサーのスピードやオメガなどから約500万ドルの報酬が入ったと報じられている。今回の一件で、食品会社のケロッグが契約を更新しないことを決めたが、メイン・スポンサーの多くは契約を続行し、市場価値の低下はそれほどではないと言われる。その理由はどこにあるのだろうか。

 通常、スポーツ選手がスポンサーなどから高額な報酬を受け取るのは、クリーンなイメージを付与される対価であり、スポーツにもたされた象徴力の大きさ故である。従って、スポーツ選手の日常生活は厳格に管理され、スキャンダラスな存在であってはならない。陸上女子のマリオン・ジョーンズ(米国)がドーピング違反によるメダル剥奪と偽証罪で禁固刑に服し、財産と社会的名声の全てを失ったことは記憶に新しい。一方で、今回の報道があくまでも吸引疑惑とされているところに、彼のポジションを守ろうとする米国オリンピック委員会とメディアの意図が感じられる。大記録を打ち立て、米国の年間最優秀男子選手として選ばれたフェルプスは米国にとってはなくてはならない存在である。

 彼に求められるのは偉大なオリンピック王者にふさわしい清純で、模範となるロールモデルである。また、今回仕組まれたのは「過ちを改める王者」というメッセージである。東京とともに2016年のオリンピック招致を目指すシカゴは、フェルプスをリードサポーターに起用し、街中に巨大な絵が掲げられているという。スポーツの神話を保持しつつ、選手の名声をも確保した今回の米国の判断と新しいメッセージは、度重なるドーピング使用で失墜したスポーツ界の信用回復となるのか、面白い問題を提起していると言える。

2009年5月20日 (水)

裁判員制度について

法学部 菊池 定信 教授

本年5月21日から、裁判員制度が始まる。これから起訴される殺人罪等の対象事件については、争点や証拠の整理手続(公判前整理手続)を経て、8月ごろには、裁判員が登場する第一回公判が開かれるものと思われる。このような時期に、論説的な一文を投稿せよ、ということであるが、裁判法を講義する教員の立場からすれば、そのテーマは、裁判員裁判に関するものにならざるを得ない。

かっての日本でも、各地の裁判所で陪審法廷が開かれたことがある(1923年の陪審法)。しかし、陪審の意見が無視される、という制度自体の欠陥があったことなどから、徐々に対象事件が減少して陪審制度は廃止された、という経緯がある。

現行の裁判員制度は、平成11年、内閣に設置された司法制度改革審議会が司法制度改革の一環として、一般市民が裁判官とともに直接裁判に関与すべきであり、そうすることにより、司法がより強固な国民的基盤を得ることができる、という趣旨の提言をしたことに始まる。この提言を受けて、平成16年に、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(裁判員法)が制定・公布され、この5月21日から施行されることになった。

裁判員制度とは、要するに、死刑や無期懲役等に当たる事件について、選挙権を有する市民の中から無作為に選び出された者が裁判員として出廷し、証人尋問や被告人質問等の証拠調べに立ち会い、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどんな刑に処すべきかを裁判官と一緒に協議して決定するものである。

このように、国民が裁判に参加する制度は、諸外国にもみられる。イギリスやアメリカ合衆国の陪審制、また、ドイツやフランスの参審制がそれである。前者は、無作為に選ばれた市民(陪審員)が全員一致をもって有罪か無罪かの評決をし、有罪と決めた場合には、

裁判官が科すべき刑を決める制度である。つまり、陪審員と裁判官とが役割を分担するところに特徴がある。これに対し、参審制は、現行の裁判員裁判と同様に、市民(参審員)と裁判官とが合議して審理判決を行う。しかし、その参審員は複数の事件を担当する任期制で、しかも団体等の推薦等に基づき選任される点で裁判員制度と異なる。なお、韓国でも、市民(参与員)参加の参与裁判制度がスタートしている。

最高裁判所や法務省等は、これまで、連日のように、裁判員制度の仕組みや内容について広報、宣伝してきた。近頃では、新聞やテレビでの取り扱いも際立っている。しかしながら、各種の調査によれば、裁判員裁判に参加したくない、というのが国民の多数意見であるという。何故か。一言でいえば、それは、裁判員制度が国民参加を基礎としていながら、その国民の目線に立って制度化していない、ということに尽きる。決めてしまってから、国民の理解を得ようと必死になっているように見えるのである。

517日朝日新聞朝刊には、61歳の男性の投稿が載っている。「裁判員制度ができる際に国民の意見を聞く場はあったのでしょうか。自分が候補者に選ばれて、そう強く感じています。いまは、徴兵制に近いような感じで受け取っています。-----」と。

                          

2009年5月18日 (月)

Improve Your Life Choices with Knowledge

Daniel L. Gossman教授


World Financial Crisis

Global Warming

War on Terror

Swine Flu

Somali Pirates

These topics are among the headlines in today’s news.  No matter what your present opinion on these world issues is, you can and should learn more about them.  The more you learn, the better informed your opinion will be.  One huge source of information about such issues is the internet.  Recent studies show that around 90% of the information on the internet is in English.  That means that learning English is one sure way to find more information about issues that are and will impact your life.

You have a great chance here at  Kanto Gakuen University to learn English which will help you get the information you need.  You have teachers who can teach you the English you need.  You have access to English resources in the library that will open avenues to information that may be valuable to you.  You have access to the internet where even more information can be found.  And you have the time and youth to learn English well.

Start learning for your future now!  The more time you spend learning now, the better such broad knowledge will help you make better decisions for you and for those around you.

コンビニ、成長鈍化、タスポ効果一巡

経済学部 今井 利絵 准教授


 2008年4月14日付の日本経済新聞朝刊に、コンビニエンスストア各社の成長が鈍化し、たばこ自動販売機用成人識別カード「taspo(タスポ)」導入に伴う集客効果が一巡し、消費低迷を背景に集客競争が激化するという内容の記事が掲載されていました。

ご存じのように1970年代から本格展開が始まったコンビニエンスストアという小売業態は、24時間営業に加えて、おにぎり、弁当、おでんなどの持ち帰り食の「中食」MD(マーチャンダイジング)の徹底により、利便性を提供することで、若者を中心に消費者の支持を受け急成長しました。その後も、宅配便の取り次ぎ、公共料金収受、ATMなど、店舗の社会インフラ化を推進することで成長を持続してきました。今やコンビニエンスストア11社の平成20年の年間売上高は7兆8566億円、国内のコンビニエンスストアの店舗数は、4万2千店と約人口3000人に1店舗のレベルまで普及しており、単純計算では、赤ちゃんからお年寄りまで日本人1人あたり、年間5万4000円もコンビニエンスストアを利用していることになります。このように普及が進んだ結果、ここ数年は、成長が鈍化してきていました。

そのため、抜けそうでなかなか抜けなかったのが、毎年前年割れを続けている百貨店売上高。今回「タスポ効果」により、コンビニエンスストアは一気に抜くことができたわけです。「タスポ効果」とは、たばこ自販機用成人識別カードを持たない人がタバコ購入を目的としてコンビニエンスストアに来店し、一緒に他の商品も買う「ついで買い」の効果により、売上が大きく伸びたことを指すのですが、この効果、驚くなかれ、2004年から前年割れの傾向を続けていた既存店ベースの売上を5%以上向上させ、これにより大手3社のチェーン全店売上高、営業利益ともに過去最高を更新することになりました。ちなみに売上トップの小売業態はスーパーですが、こちらも前年割れを続けるものの、昨年実績で売上高13兆2754億円。さすがのコンビニエンスストアでも追いつくのには一苦労です。

今後は消費低迷の中、タスポ効果も一巡し、各社が集客を落とさぬよう、コンビニエンスストアでは御法度であった価格競争を含め、激しい競争が始まっており、さらに小売業第1位のスーパーからも新たなライバルが登場しそうです。高齢化社会が進むにつれ、家から近いコンビニでの買い物が増加すると予測したイオンは、売り場面積がコンビニ規模の超小型スーパーを本格的に出店すると発表しました。10年後この勝負はどうなっているのでしょうか。

さて、この「タスポ効果」は、法律が変わることにより市場に大きな変化が起こるという、非常に分かりやすい事例だといえます。コンビニエンスストアの経営者も予想外の効果だったそうですが、そもそもタスポの導入は、2005年に発効した世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組み条約に、たばこ自販機の未成年者の利用制限を求める条項が盛り込まれたことに起因します。この条約を受け、財務省はたばこ事業法に基づき、自販機に成人識別機能を付けることを義務付け、業界団体によりタスポが導入されました。結果として、多くの喫煙者が面倒に感じて、タスポを申し込まなかったため、コンビニエンスストアに「タスポ効果」が表れたわけです。条約が批准され、成人識別機能が義務づけとなったときに、ここまでの影響は予想されませんでした。

今年は衆議院選挙がありますが、本学の学生の皆さんにも、このように私たちの生活や市場、企業に大きな影響を与える法律の成立に関わる政治にもぜひ興味を持っていただき、選挙権をお持ちの方は必ず投票に行っていただきたいと思います。

統計に対する認識 

経済学部 小沼 博義 教授

経済学や経営学では,講義や利用テキストの中に,必ず統計(一般にはデータと言われる)が引用されることは,皆さん経験されていることでしょう。統計とは,社会の出来事を数字で表したものです。私たちは,数字で表されたものは正確であると思い勝ちですが,経済学や経営学の分野を含む社会の出来事を表す統計は,正確さよりも分かりやすさに重点がおかれているのです。

例えば,皆さんが健康診断を受けるとき,身長や体重の測定も行われます。そして,身長は173.4cm,体重は67.8kgといった結果を知らされます。この結果は,あなたの日常生活の中で役立つことがあるでしょうか。洋服を買う場合に,身長が173.4cm,体重は67.8kgの体に合ったものを指定して買う人はいません。LMSといったサイズを目安にしたり,Y体,A対,AB対という表示から好みの服を選んだりするはずです。洋服のメーカーにとっても,細かい身長や体重などに合わせて生産することになれば,大量生産して良い品を安く提供することはできなくなってしまいます。つまり,おおよその体のサイズが分かれば十分なのです。

他人に自分の身長や体重を正確に伝えるときも,小数点以下の数字を言っても,相手はすぐ忘れてしまいますから,175cm弱で約70kgと言ったほうが,相手もわかりやすいはずです。その他のどのような機会にも,身長の173.4cmと体重の67.8kgという小数点がついた数字を活用できる場はないのです。経済や経営に関しては,金額表示の統計が使われますが,金額も額が大きくなると,一円単位までの細かな数字よりも,億単位や兆単位にした額のほうがわかりやすいため,利用されることも,身長や体重と同様な説明ができます。

さらに,統計には,時間や場所に制約されるという性質があります。身長や体重について,日本人男性あるいは女性の1950年の統計は,1950年という時の日本の社会環境の中で生活していた人々の数字であり,2009年の統計は,2009年という時の日本の社会環境の中で生活している人々の数字です。両年の社会環境は著しく異なっているはずです。それなのに,単純に両者を比較して,その差を強調することに,どれほどの意義があるでしょうか。また日本という場所に住む人々の身長や体重といっても,1950年の統計には沖縄が含まれないのに対して,2009年には含まれているとしたら,やはり単純な比較ができないことは明白です。経済や経営の規模などの統計を,異なる年で比較するときも,同様な注意が必要となるのです。

経済学や経営学の分野では,緻密な数式モデルを展開することが行われますが,モデルの推計に使われる統計には,上で述べたような特性があることを十分に認識しなければなりません。自然科学の分野で法則と呼ばれる中で展開されるモデルのように,正確に時間と場所を超越して成り立つモデルを,経済学や経営学の分野で作ることは不可能なのです。時間と場所に限定されたモデルから,社会で起きていた経済や経営の事実を見つけ,もしそれが有意義なことであれば,統計は使命を十分果たしたことになるのです。

2009年5月12日 (火)

開設のお知らせ

関東学園大学の教員が最新のニュースや各専門分野について解説します。

今後継続的に記事の投稿を行いますので、お楽しみにしてください。