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2009年5月18日 (月)

コンビニ、成長鈍化、タスポ効果一巡

経済学部 今井 利絵 准教授


 2008年4月14日付の日本経済新聞朝刊に、コンビニエンスストア各社の成長が鈍化し、たばこ自動販売機用成人識別カード「taspo(タスポ)」導入に伴う集客効果が一巡し、消費低迷を背景に集客競争が激化するという内容の記事が掲載されていました。

ご存じのように1970年代から本格展開が始まったコンビニエンスストアという小売業態は、24時間営業に加えて、おにぎり、弁当、おでんなどの持ち帰り食の「中食」MD(マーチャンダイジング)の徹底により、利便性を提供することで、若者を中心に消費者の支持を受け急成長しました。その後も、宅配便の取り次ぎ、公共料金収受、ATMなど、店舗の社会インフラ化を推進することで成長を持続してきました。今やコンビニエンスストア11社の平成20年の年間売上高は7兆8566億円、国内のコンビニエンスストアの店舗数は、4万2千店と約人口3000人に1店舗のレベルまで普及しており、単純計算では、赤ちゃんからお年寄りまで日本人1人あたり、年間5万4000円もコンビニエンスストアを利用していることになります。このように普及が進んだ結果、ここ数年は、成長が鈍化してきていました。

そのため、抜けそうでなかなか抜けなかったのが、毎年前年割れを続けている百貨店売上高。今回「タスポ効果」により、コンビニエンスストアは一気に抜くことができたわけです。「タスポ効果」とは、たばこ自販機用成人識別カードを持たない人がタバコ購入を目的としてコンビニエンスストアに来店し、一緒に他の商品も買う「ついで買い」の効果により、売上が大きく伸びたことを指すのですが、この効果、驚くなかれ、2004年から前年割れの傾向を続けていた既存店ベースの売上を5%以上向上させ、これにより大手3社のチェーン全店売上高、営業利益ともに過去最高を更新することになりました。ちなみに売上トップの小売業態はスーパーですが、こちらも前年割れを続けるものの、昨年実績で売上高13兆2754億円。さすがのコンビニエンスストアでも追いつくのには一苦労です。

今後は消費低迷の中、タスポ効果も一巡し、各社が集客を落とさぬよう、コンビニエンスストアでは御法度であった価格競争を含め、激しい競争が始まっており、さらに小売業第1位のスーパーからも新たなライバルが登場しそうです。高齢化社会が進むにつれ、家から近いコンビニでの買い物が増加すると予測したイオンは、売り場面積がコンビニ規模の超小型スーパーを本格的に出店すると発表しました。10年後この勝負はどうなっているのでしょうか。

さて、この「タスポ効果」は、法律が変わることにより市場に大きな変化が起こるという、非常に分かりやすい事例だといえます。コンビニエンスストアの経営者も予想外の効果だったそうですが、そもそもタスポの導入は、2005年に発効した世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組み条約に、たばこ自販機の未成年者の利用制限を求める条項が盛り込まれたことに起因します。この条約を受け、財務省はたばこ事業法に基づき、自販機に成人識別機能を付けることを義務付け、業界団体によりタスポが導入されました。結果として、多くの喫煙者が面倒に感じて、タスポを申し込まなかったため、コンビニエンスストアに「タスポ効果」が表れたわけです。条約が批准され、成人識別機能が義務づけとなったときに、ここまでの影響は予想されませんでした。

今年は衆議院選挙がありますが、本学の学生の皆さんにも、このように私たちの生活や市場、企業に大きな影響を与える法律の成立に関わる政治にもぜひ興味を持っていただき、選挙権をお持ちの方は必ず投票に行っていただきたいと思います。