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2009年8月

2009年8月31日 (月)

選挙結果についての雑感

選挙結果についての雑感

関東学園大学法学部

(准教授) 並河 

2009/08/31

 昨日行われた衆議院総選挙において、民主党が308議席の絶対安定過半数を獲得し、政権交代がほぼ確実なものとなりました。前回の総選挙では自民党が296議席を獲得しており、二回続けて第一党が単独で絶対安定過半数を獲得する結果となりました。

 このような結果になった理由としては、票を議席に過大に反映させる小選挙区制の特徴は言うまでもなく、麻生首相の言動への不信感、不況と雇用の不安定化、民主党の若手候補の擁立と自民党の世代交代の遅れ、自民党の公明党との一体化による一部支持層の離反、民主党の各種団体の取り込みの成功、メディアの民主党への肩入れをはじめ、様々な要因が挙げられるでしょう。

 もう少しマクロに考えるならば、バブル景気が終わって18年、自民党が政権に戻って15年経過し、この間、弱含みの好景気もあったものの、それ以上に不安定化が大きく、自民党政権下の不安定化した社会で政治的社会化を経た、自民党への信頼感がない世代が20代と30代をしめるにいたっため、民主党が支持を集めやすい状況になっていました。戦後の繁栄を経験し自民党を支持していた人たちも、長期の不安定化の中で支持を取り下げ始めたこともあるでしょう。また、橋本改革以後の公共投資削減や地方分権の推進によって、中央の資源分配によって支持を集めるクライアンティリズム的な関係が弱くなり、自民党が従来支持層を失っていったことも大きいでしょう。

 メディアについては、民主党支持であったということではなく、郵政選挙で自民党に対して起きたことが、今回は民主党に対して起きたということです。メディアのビジネスとしての特性から、値が少し高いときや少し低いときは逆張りして耳目を引き、値が高いときはつり上げて読者・視聴者を集め、値が下がり始めたら売り浴びせて関心を引こうとするような、株式市場における行動とにた傾向が見られるように思います。それが良いか悪いかは別にして。

 今後、民主党を中心に国民新党と社民党からなる政権が、連立政権になるのか閣外協力になるのかはわかりませんが、生まれることになります。マクロ経済運営についてはそれほど大きな変更はないでしょうが、教育、福祉、雇用については、大きな違いが生じることが予想されます。安全保障や外交については、選挙前は政局的な判断だけで行動していたためよくわかりませんが、短期的には大きな方針変更はないでしょう。どのような閣僚人事がなされ、どのような政策が実行されるのか、マニフェスト片手にしっかりと見ていくことが大切だと思います。なんにせよ、新しい政権が新しい政治とともにこの難局を切り開いていくことに期待する点では、どの党に投票した人も同じではないかと思います。同時に、敗者となった自民党が国民に信頼される政党として蘇り、他の野党ともども、まっとうな緊張感のある政治、国民のための政治が実現されることを願います。

 最後に、これからの政治を考えていく際に注意すべきことを一点、述べておきたいと思います。それは、世間には、自分の立場の都合でしかない意見を、さも社会全体のことを考えたふうを装って語る人が多いという点です。前回の総選挙では、与党併せて全議席の2/3を超える327議席となり、議会制民主主義の危機だといった大仰な論評や、民主党が危機的状況に陥ったあおり立てる見方もありました。それについては、以前この場で指摘したように誤りでありミスリーディングです。前者については政権交代が生じやすくするために導入した小選挙区の持つ特徴が、与党の勝利に寄与する形で出ただけのことであり、自民党の勝利を貶めるものです。後者について、実際の票の推移を見れば、基礎票は固めていることが分かりますので、民主党への期待感を不当に引き下げるものです。事実、前回の参議院選挙の結果が、すべてを物語っています。

 今回の選挙についても、様々な識者から様々なコメントが出るでしょうが、それらを冷静に見る必要があると思います。前回、自民党が圧勝したことに懸念を述べていた人が、今回の民主党の圧勝を民主主義の前進のようなことを言っているとすれば、それは民主主義を尊重した発言ではなく、たんなる政治的立場の表明でしかないことがわかるでしょう。また、前回の自民党の勝利を小選挙区の当然の結果と言っていた人が、中選挙区制への回帰を言い出すなら、それもまた同様です。かつて与党の横暴を唱えた人が、民主党が過半数で押し切ったときになんと言うか、かつて野党の議会での抵抗に異議を唱えた人が、自民党の野党としての行動をどう論評するか、「下衆の勘ぐり」をめぐらすのも悪くないと思います。

 残念ながら、政治学者も含め、意識してかどうかは分かりませんが、自らの政治的立場の都合で援用する理屈を変える人が少なくありません。それ自体は悪いこととは言い難いのですが、読み手がそうと分かっていないと、判断を誤ることにもなりますから、冷静かつ慎重に、様々な意見や情報を比較して判断するようにしましょう。