« 駅弁と発表 ―東 倫広准教授 | メイン | アメリカ連邦最高裁判所判事の指名 ― 並河 仁准教授 »

2010年5月 6日 (木)

日本語能力試験の改訂について思うこと ― 小池 康講師

 みなさんは「日本語能力試験」というものを知っていますか。おそらく留学生の読者の方なら聞いたことがあると思います。中には、受験したことがあったり、1級や2級の認定を受けた人もいるのではないでしょうか。
 日本語能力試験は、日本語を母語としない人を対象に、公的に日本語能力を測定し、認定することを目的として、1984年より毎年一回実施されてきました(ただし、2009年は1、2級のみ二回実施)。単に日本国内だけではなく、海外の49の国や地域でも実施され、全世界で50万人以上が受験しました(2007年度)。
 試験には1級から4級までの四つのレベルがあり、受験者は自分の必要とするレベルの試験を受けます。各レベルとも「文字・語彙」「聴解」「読解・文法」といった三種類の内容から構成され、総合得点で一定の得点以上ならば、その級(レベル)の日本語能力があると認定されます。

 さて、このように四半世紀にわたって行なわれてきた日本語能力試験ですが、今年2010年より、レベル的にも内容的にも新しい形となって生まれ変わります。
 まずレベル的には、認定される級の数がこれまでの四つから五つになります。新しく設定された級はそれまでの2級と3級の間のレベルに相当するもので、これまでの試験では3級までは比較的簡単に取得できたが、2級になるとなかなか取得できなかったという事情を踏まえたもののようです。3級から2級に上がれず、日本語への学習意欲が減退してしまった人も多かったようですが、今回の改定には、そのような人を減らし、学習意欲を維持させる目的もあると思います。
 内容的な変化としては、実際に「使える」日本語の能力を測ろうとしていることです。これまでは、1級を持っている外国人でも日本人とのコミュニケーションに難点がある人もいました。つまり、日本語の知識はあるけれども、場面や状況の違いに応じた適切な表現の選択ができない人が多かったということです。今回の改定によって、日本語の知識と共に日本語を適切に使える力(「運用能力」と言います)の両方をレベルアップさせるような日本語教育がより進んでいくものと思われます。

 さて、ここでふと気になったことがあります。確かに日本語を学ぶ外国人に日本語の知識とその適切な使い方を教えることはとても重要です。では、逆に今の日本人にどれだけ日本語の知識と適切な運用能力があるでしょうか。みなさんは、どんな相手に対しても相手に配慮した日本語を使える自信はありますか。また、場面や状況に応じて日本語を使い分ける自信はありますか。日本で生まれ、日本で育ち、日常生活で日本語を使っているからと言って、日本語が適切に使えているかと改めて聞かれるといささか自信がなくなるのではないでしょうか。
 このたびの日本語能力試験の改定は、我々にとっても日本人が見失いかけているものを再確認・再認識するきっかけにもなりうるものだと思います。ですから、みなさん、この日本語能力試験の試験問題を見る機会があったら、ぜひやってみて下さい。そして、自分の日本語がどのくらいのレベルなのかを確認してみて下さい。
 意外と、外国人に近い日本人になってしまうかもしれませんね...。