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2010年10月

2010年10月27日 (水)

ポスティング制度の適用から考える日本の野球界 ― 石坂 友司講師

 今秋、プロ野球のペナント以上にメディアを賑わせている大きな問題がある。2人の一流投手によるMLB(アメリカ・メジャー・リーグ)へのポスティング移籍問題である。

 ポスティングの主役は日本ハムのダルビッシュ(以下選手の敬称略)と東北楽天の岩隈。ともにチームの大エースである。松坂の移籍以来おなじみになったポスティングについて、ここで簡単におさらいしておこう。

 ポスティング(システム)とは、海外FA権(フリー・エージェント)を取得していないNPB(日本野球機構:日本のプロ野球)の所属選手が、球団の同意を得てMLBへと移籍することができる制度で、1998年に制定された。MLBの獲得希望球団は入札を行い、最高金額を提示したチームに移籍が認められる。仮に移籍が認められた場合、入札金はその選手の保有権を有するチームに全額支払われる。最高入札額のチームにのみ交渉権が与えられるため、日本選手が移籍先を自由に選べないという問題や、入札額・チームをみて、日本球団が(選手の意志にかかわらず)移籍を一方的に拒否することができるという決まりもあり、重大な問題をはらんでいる制度といえる。

 ところで、現在の日本プロ球界はドラフト制度1) を採用しているため、必ずしも選手が希望した球団に指名され・入団できるとは限らない。希望しない球団に指名された選手が契約回避や大学進学などを選択するリスクを減らすため、一定期間プレイすれば、選手の希望球団に移籍が可能となる制度としてFA制度が採用されている。このFA制度は国内・海外に大別することができる。

 国内FAは145日以上の1軍登録が8シーズンで成立し、FA選手の獲得を希望する球団と選手が契約交渉し、合意に達すればその球団に移籍が認められる。獲得球団(移籍先)はその選手の保有権を有する球団(移籍元)に金銭および人的補償をすることが決められている。この場合の金銭的補償とは、年俸ランク2) に応じて決まっており、Aランクの選手は年俸の80%、Bランクは60%のFA補償金(Cランクはなし)を、また、他の選手による人的補償を求めることもでき、その場合Aランクの選手は年俸の50%、Bランクは40%のFA補償金(Cランクはなし)+選手を移籍先の球団は用意することになっている。

 一方、海外FAは145日以上の1軍登録が9シーズンに到達することとされており、国内FAよりも1シーズン余計に日数を要する。この場合、移籍先球団(MLB)に移籍補償制度は適用されないため、日本球団は1円も獲得することはできない。ただし、ポスティングと違い選手は希望する球団を自由に選択することができる。

 ポスティングによる移籍が注目を集めてきたのは、海外FAによるMLBへの選手移籍が現実味を帯びてきたことによる。それまで日本の選手はMLBで通用するとはあまり考えられておらず、移籍の制度的整備も十分にされてはいなかった。また、シーズンオフに行われる日米野球などではMLBのパワー野球に圧倒される試合展開が多かった。それを一変させたのが野茂をはじめとする日本人投手の活躍である。

 野茂は1994年まで近鉄(現オリックス)で活躍していたが、独特のトルネード投法と調整法、フロントとの確執などからMLB挑戦を決意し、任意引退選手(近鉄の保留権を残したままでの引退扱い、現在この方式では3年間海外には移籍できない)としてアメリカに渡った。野茂はドジャースとのマイナー契約(年俸は近鉄の1億4000万円→10.9万ドル:以下年俸は推定)からスタートしたものの、メジャーに昇格し、13勝をあげ新人王に輝いた。その後2008年に引退するまで、123勝をあげ、2回のノーヒット・ノーランを達成している。また、野茂に続くように、日本球界から海を渡った長谷川(金銭トレード)、柏田(野球留学)、吉井(FA)、木田(FA)らは日本人投手の実力を示し、日本人選手がMLBにとって安価な移籍市場であることを知らしめた。

 これによって危機感を強めたのはNPBである。当時のFA制度は国内への移籍に限って、移籍選手の年俸×1.5倍の金銭的補償を定めていたが、海外へのFA移籍はMLBとの協約がないため金銭的補償が得られない(これは現行の制度でも同様)。1998年に初のFA移籍した吉井を例にとると、年俸9200万円に対し、日本の球団に移籍した場合、ヤクルトには9200万円×1.5倍=1億3800万円の補償金が入り、その金額で外国人選手など代替の選手補強が可能になる。ところが、結果としてメッツに移籍されたことで、ヤクルトは1円も獲得することができなかった。選手の海外FA移籍は、日本の球団にとって人気選手を失うだけでなく、その金銭的補償を失うことも意味したのである。一方で、報道によると、吉井の年俸も50万ドル+出来高と大きく目減りしていた。

 そこで考案されたシステムがポスティング制度である。この制度は、FAとは別にMLBへの移籍を金銭的に可能にする制度で、移籍する選手の実力が高ければ高いほど入札金額がつり上がり、移籍元の球団に利益をもたらす。そして、多くの選手の渡米、活躍で日本人選手の評価はうなぎ登りに高まっていった。この制度を利用した初の日本人選手(適用第1号は、1999年、ドミニカ出身の広島・ケサダ選手で移籍金40万ドル)であるイチローは移籍金1312万5000ドルで海を渡った。イチローの活躍については多言を要しないが、2004年にはMLBの最多安打記録を更新し、今年は10年連続200本安打以上という大記録を樹立した。また、WBCでの優勝を果たした日本の野球界は一段と評価を高め、2007年には松坂が5111万1111ドルという破格の入札金でレッドソックスに移籍を果たしている。松坂という大エースを失っても、西武には十分な補強資金がもたらされたのである。

 しかしながら、日本球界にとって多大な利益を生み出すポスティングシステムの適用事例は、実際のところそれほど多いというわけではない。松坂と同じくポスティング移籍した岩村、井川を最後に、2008年以降の主力級選手の海外移籍は全てがFA移籍である(ドラフトを拒否して渡米した田澤の例外などがある)。その理由は、ポスティングの入札球団が現れなかった事例と、FAが成立する満期まで選手に活躍を求め、移籍を認めなかった日本球団の事情による。ポスティングによる移籍は多額の入札金を獲得する可能性がある一方、人気選手の放出による人気低迷という間接的マイナス効果が発生する、いわゆる禁断の果実なのである。

 さて、ここまで制度的な確認をしてきたところで、冒頭の2人の移籍話に戻ろう。同じようにみえる移籍もよくみると事情が異なっていることがわかる。岩隈は今年10年目ながら、ようやく国内FAの資格を獲得し、今季10勝をあげた。海外FAの取得は来年とせまっており、仮に楽天でもう1年プレイした場合、MLBへの移籍はFA適用となり、彼の移籍補償金は球団には入らない。一方のダルビッシュはプロ入り6年目の選手で今季12勝をあげた。海外FAの資格取得までにはあと3年弱が必要といわれる。仮にポスティング移籍する場合、移籍金は7500万ドルという巨額なものになると報道されている。

 先に述べたように、ポスティング移籍には球団の承認が必要とされるため、特に一線級選手の移籍に球団は慎重になり、FA期限ぎりぎりまで許可しないケースがほとんどであった。なぜなら早期に選手を放出すれば、高額な移籍金を得られる可能性は高くなるが、その分チーム力は下がり、ファン層を失うことにもつながりかねないからである。その意味で、岩隈のケースは海外への移籍希望をかなえながら、球団が実をとる最終手段といえるが、ダルビッシュのケースは球団が一時的にうるおうものの、今季4位に低迷したチームの戦力ダウンは避けられず、結果としてかなりのマイナス効果が出ると考えられる。さらにいえば、野球人気の低下という球界全体の損失につながるリスクを負う。

 ちょうど3年前の本ニュース解説で、野球のクライマックス・シリーズ制度(CS)の導入について述べたとき、特にパ・リーグでは優勝をかけて行われるシリーズに、思わぬ熱狂がわき起こっていた。それが現在ではどうであろうか。セ・パともに今年はまれにみる接戦で、セ・リーグでは1ゲーム差に3チーム、パ・リーグでは3ゲーム差に4チームが収まった。また、WBCの2連覇を経験し、野球人気復活の兆しが見られると報道されたのは昨年のことである。しかしながら、盛り上がりを見せるはずの週末(10月16日・17日)、CSの放映はNHKのBSデジタルに限られ、地上波での放映はなかったのである。中日-巨人戦はかろうじて放送されたものの、日本一を決定する日本シリーズの対戦カードが中日vsロッテという全国区では必ずしも人気球団ではない両チームの対戦なだけに、すでに地上波放送が消滅するのではという危惧がなされている。

 かつてのドル箱といわれた巨人戦の年間平均視聴率も、現発表時点で8.4%(関東・8月までの集計、ビデオリサーチ社)と昨年の10.0%を大きく割っている。野球放映が大きく減少する中、横浜ベイスターズの身売り問題が浮上したことは偶然ではない。ベイスターズを所有していたのはTBS、いわゆるメディア企業である。このことはメディアにとってプロ野球がもはや良質なコンテンツではないということを示している。

 選手の海外移籍希望をかなえるという建前を掲げながらも、実際には移籍金の損得勘定を気にする球団の本音。岩隈には応札額(一定以下の入札金では移籍に応じない)が設定されている。一方、ダルビッシュの移籍は批判が強かったせいか、ここにきて本人が撤回の意志をブログで掲げている。情勢を見守る必要はあるが、有名選手の流出を意味する彼のポスティング移籍を日本ハムが認めたとき、日本球界の衰退はさらに加速するだろう。

 1)現行のドラフト制度:プロ志望届を提出した高校生と大学生、すべての社会人選手が対象となる。1巡目は「入札抽選方式」をとり、12球団が一斉に獲得希望選手を指名し、重複した場合はくじによって交渉獲得球団を決定する。くじに外れた球団は再び選手を指名し、重複した場合は再びくじを引く。このようにして12球団の指名が決まるまで繰り返す。2巡目以降は「折り返しウェーバー方式」をとり、下位球団(今年は横浜→東北楽天・・・の順)が優先して交渉権を獲得する。3巡目は逆に上位球団(今年は福岡ソフトバンク→中日・・・の順)から指名し、これを繰り返して120名まで指名を続けることができる。今年のドラフトは10月28日に開催される。「ハンカチ王子」として甲子園をわかせた斎藤佑樹投手などが目玉。ちなみに本学からは2選手が候補となる。

 2)FA補償金の年俸ランク:移籍元の球団における日本人選手の年俸順位が、3位に入る選手はAランク、4~10位までがBランク、それ以下がCランクと決められている。

2010年10月20日 (水)

外食産業で久々の首位交代 ― 今井 利絵准教授

 牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーが低価格戦略などを背景に順調な成長を続け、2011年3月期連結決算予想売上高で前期比10%増の3685億円と最高を更新する見通しとなり、日本マクドナルドホールディングスを抜く見込みであることが報道された。

 「マクドナルト」は、1982年に小僧寿しを抜いて、単体外食ブランドとして、売上日本一となり、それ以来、常に外食売上ランキングで首位を維持してきた外食業界の巨人。平成不況下でデフレ経済の長期化を予見し、円高による仕入れコスト低下を背景に低価格戦略を進め、ファーストフード価格破壊戦争を勃発させ、デフレ時代の勝ち組ともてはやされた。そのデフレ時代の勝ち組を、牛丼市場の低価格競争の勝者である「すき家」が抜き去るという、まさに連鎖的な価格破壊が続く、デフレ時代を象徴する出来事である。

 ちなみに、日本マクドナルドホールディングスは、2009年12月決算で上場来最高益を更新し、業績が良く、体力がある今こそ、店舗の新陳代謝を一気に進める好機という判断で、1年で全店舗の1割強に当たる433店舗を一気に閉鎖するという大胆な経営改革を計画しており、2010年12月期連結決算売上高を、前期売上3623億円から13%減の3130億円と予想している。黒を基調に高級感を訴求する新型店舗でブランドイメージの改善を図るなど低価格路線から、多角化戦略に舵を取りつつある「マクドナルド」と、あくまで低価格路線をひた走る「すき家」。

 今後の両社の戦略から、日本経済の方向性が見えてくるかもしれない。

2010年10月13日 (水)

引きこもり、仲間、学生の就職活動を、現代経済学から考える ― 俵 典和講師

 一見、経済学とは全く関係の無いように見えるが、しばしばメディアで指摘されるこのような社会問題に対し、経済学は重要な視点を提供する。最近の経済学と言いたいところだが、実は、40~50年以上前に既に発表されている経済学の成果に基づくものである。ベッカーの結婚市場の分析(Journal of Political Economy 1973)、ゲイル・シャプレイのマッチングのアルゴリズムについての研究(American Mathematical Monthly 1962)である。比較的最近のものであれば、バーデット・コウルズによるマッチングと社会階層・集団の形成に関する理論的研究がある(Quarterly Journal of Economics 1997)。最近、シンガポール経営大学のジャケット助教授とシンガポール国立大学のタン助教授によって拡張されている。そして、極めつけは、実証産業組織のスーパースターであるシカゴ大学のアリ・ホルタス教授によるオンライン上での出会い系サイトのデータを使ったマッチングモデルの推定に関する研究だ(American Economic Review 2010)。当該研究は、上述のゲール・シャプレイのモデルおよび、Adachiモデル(Journal of Economic Theory 2003)の構造推定である。筆者も以前、2005年頃、ホルタス教授の「オークション、契約、マッチングの構造推定」の授業で、学習したことがあり、懐かしい。これは、近年発展が著しい、オークションおよび契約理論の構造推定の研究と、共有する部分が多く、今後の発展が期待されている。現時点では、データのavailability等から、産業組織の実証研究で爆発的な発展を見せているが、今後は、労働市場や金融市場といった分野への応用も期待したいところである。(労働市場に関しては、bidのデータが無いことが問題だ。実験等でデータを作成するか、または、特定の労働市場のデータを探すことが考えられる)。

 バーデット・コウルズのモデルでは、異なったタイプ(特性、能力等)の男性と女性(学生と企業)がいる。それぞれのタイプは、[0,1]区間上のxおよびyという値をとり、与えられた分布M、Fに従っている。男性、女性が結婚した場合の満足度または生産は、xyとする。お互いがお互いを探すのには、時間がかかる。例えば、毎期ある確率で異性と出会うが、その異性との結婚が成立するとは限らない。例えば、あなたがy=1の女性だとしよう。そして、一か月の探索の後、x=0.7の男性と出会ったとする。さて、結婚するだろうか?二つの可能性がある。一つは断り、もっとxの値の大きい男性をさらにサーチする。もう一つは、またサーチするのは大変だから、この男性と結婚する。さて、こうした行動を、全ての主体がとると、次のような興味深いことが実現する。男性、女性のタイプ[0,1]が、例えば[0,x1], [x1,x2], [x2,1]、[0,y1],[y1,y2],[y2,1]のように3つの区間に分割される。そして、[0,x1]の男性と[0,y1]の女性同士、[x1,x2]の男性と[y1,y2]の女性同士、[x1,1]の男性と[y1,1]の女性同士が、互いに結婚市場を形成し、サーチし合う。なお、分断される結婚市場の数は、サーチの摩擦に依存する。例えば、互いが互いをサーチする時間が長くなれば、タイプが違っても結婚した方がいいから、結婚市場の数は少なくなる。反対に、短期間で候補となる相手と出会い易くなれば、分断される結婚市場の数は多くなる。

 ホルタス教授のオンライン出会い系の研究については、一般向けの解説が、シカゴ大学のレビット教授著の『超やばい経済学(Superfreakonomics)』で紹介されていたと思うので、ご覧頂きたい。概略は、概ね同じようなタイプ同士(例えば、高学歴と高学歴、高身長と高身長、同じ趣味、高所得と高所得など)が、オンライン出会い系サイトで出会っているという事実だ。自らの写真を投稿しないと、返信が減る傾向もあるそうだ。この問題で重要なのは、自らの特徴やタイプ、好みは、私的情報だということだ。正直に自らのタイプをどのように申告させるか、というのは、経済学で発展が著しいメカニズム・デザインの問題である。一度は、是非、原論文をご覧頂きたい。

 さて、同じような特性を有する者同士がくっつく、お互いに探しあう、という状態を理論的に記述できることが分かった。確かに周りを見渡すと、概ね頷けるだろう。結婚市場に関して言えば、筆者の周りには、博士同士、弁護士同士、医者同士、経済学者同士の夫婦は少なくない。昔のクラスメートの中にも、経済学者と医者、経済学者と弁護士、経済学者と金融プロという組み合わせが多い印象だ。

 さて、以上のモデルを使って考えてみたいことは、どのような場合に、社会的に「孤立」してしまう人が出てくるかである。厳密な分析をしたわけではないが、予測をすることは無意味ではあるまい。まず考えられるのは、自分自身のタイプ・特性を正しく理解していない場合であろう。単純化のため、男性(学生)と女性(企業)には、A、B、C、D、Eの5タイプがあり、同じタイプがくっつくと、最大の満足(生産)が得られるものとする。サーチのコストの大きさにも依存するが、均衡では、Aタイプ同士、Bタイプ同士、。。。が、互いにパートナーを探しあうとしよう。客観的にはBタイプだが、自分はAタイプだと誤認し、Aタイプのマッチング市場でAタイプの相手を探してしまう状況を考えよう。この場合、このBタイプの人は相手を探すことはできない。なぜなら、そのサーチ市場にはAタイプの人しかいないので、Bタイプの人はくっつかないからだ。

 しかしながら、もしこのBタイプの人に「学習能力」があれば、何かおかしい、と認識し始めるだろう。そして、自分は本当にAタイプなのだろうか、と考え始める。そして、遂には自分はBタイプなことを発見し、Bタイプ市場でサーチを始めるだろう。そして、ほどなくBタイプの相手を見つけることが出来る。この場合、サーチに時間はかかってしまったが、最終的に「孤立」は免れている。現実には、自分自身のタイプを誤認してしまう人の全てが、「学習能力」や、別の市場でサーチをし直すという「柔軟さ」を有しているわけではない。中には、自分自身の客観的なタイプを知ることができない人もいれば、仮に分かったとしても、正しいタイプの市場でサーチし直す「柔軟さ」「エネルギー」を有していない場合もある。この場合には、残念ながら「孤立」してしまうことになる。

 現実の人間関係、結婚市場、就職活動を見ると、なるほどと思うことが少なくない。例えば、同性、異性かかわりなく、良好な友人関係を築いていくには、候補となる相手を気にいるだけでなく、相手にも好かれなくてはいけない。自分のことばかりしゃべるのではなく、相手のことも考え、相手の話も真摯に耳を傾けなればいけない。就職活動も同様の側面がある。相手の企業の研究をせず、自分のことを「演説」するなど、もっての外だ。また、早い段階で、自分の実力にあった企業(例えば地元の小規模の中小企業など)をきちんと勉強し、面接しておくことが大切だ。SPIを満点も取れないのに、聞いたことがある有名企業しかエントリーしないというのは、失敗する就職活動の典型だ。人間関係でも、就職活動でも、基本は、相手に関心を持ち、相手をよく知る努力をし、そして、相手に強引に近づくのではなく、相手を惹きよせる工夫をすることだろう。しばしば、よい友人関係や恋愛経験を有する人は、就職活動で成功しやすい、と言われるが、これは、上記経済理論モデルと整合的な面がある。

 最後に、今年は、昨年以上に、大学生の就職は大変なようである。この拙稿が就職活動の一助になることを切に願っている。

2010年10月 6日 (水)

国際地学オリンピック ― 瀧上 豊教授

 国際地学オリンピックとは高校生のための科学オリンピックの1つで今年のインドネシア大会が第4回目の開催である。第1回の2007年は韓国、第2回の2008年はフィリピン、昨年の第3回の2009年は台湾で開催され、日本の高校生は第2回のフィリピン大会から参加している。私は、第1回韓国大会の視察から参加しており、第2回大会からは高校生を選抜するための日本国内予選の開催と国際大会派遣のための組織(NPO法人地学オリンピック日本委員会http://jeso.jp/ )を運営して、毎年、全国から選抜された4名の高校生を国際大会に引率している。

 今年9月に行なわれたインドネシア大会では17カ国63名の高校生が世界から集まり、日本全国の約700名から選抜された高校生は、1名が日本で初めての金メダルを受賞し残りの3名も銀メダルを受賞するというすばらしい成績であり、多くの新聞やテレビで報道されました。

 この国際地学オリンピックに参加してみて感じたことを3つ述べてみたい。

1) 世界各地では、環境問題に絡めて地球を知る学問である地球科学への関心が高まっている。しかし、日本では大学受験で地学がほとんど使われないことから、高校で地学を開設している学校が極端に少なくなっている。そのため、地学を履修する学生も少なく、日本のほとんどの若者は環境問題を表面だけしか見ることができず、本質的に考えることができない状態である。すなわち、我々にとって現在必要と思われる学問の内容と日本の教育課程が乖離している。

2) 国際地学オリンピックでは国際協力野外調査という、メダルと関係ないイベントがある。これは、各国バラバラの高校生が6-7名でグループをつくり、地学の野外調査(今年は鍾乳洞)をして、その結果を半日程度でパワーポイントにまとめ上げ、英語でプレゼンテーションを行なうものです。そこには真の国際協力が存在する。日本の高校生は、将来、全員地球科学関係に進学するわけではなく、弁護士や医学部志望の生徒もいます。将来いろいろな方面に進む日本の高校生が、このような国際協力を肌で感じる重要性を実感します。

3)  国際地学オリンピックに参加する日本の生徒は、全国でも優秀な高校からの選ばれることが多いですが、いままで、全員英語で苦労しています。参加国は英語が母国語でない国が多く、高校生の英語は決して上手とはいえませんが、英語をツールとして使いこなしています。ここにも、日本の英語教育の貧弱さを感じます。

 このように、ここ4年間、国際地学オリンピックに参加してみて、学ぶことがたくさんありました。来年2011年はイタリア大会です。すでに一次予選の募集が開始されています。お知り合いに高校生がいらっしゃいましたら、是非、応募することをお勧めします。
また、2012年には日本のつくば市で第6回国際大会を開催します。日本としては是非成功させたいと思っております。