ワンポイントアドバイス(5)
Q(5)
「残存聴力を活用する」とは具体的にはどのようなことなのでしょうか?
A 多少音圧を上げると聞こえる周波数帯域を残存聴力域と言うことができますが、その狭い限定的な残存聴力域での聴き取り能力は、日頃の傾聴姿勢や訓練次第で向上いたします。重度の聴覚障害でも、多くの場合、低い周波数帯域に残存聴力が認められます。なかには、低い周波数帯域に加えて、やや高い周波数帯域にも残存聴力の認められるケースがあります。(その場合、「音の融合」とでも表現できるような現象が生じ、聴き取りはかなり容易となります。)いずれにしても、生来もっている聴力を十分に活用できるよう聴き取り能力を磨くことが「残存聴力の活用」ということになります。
聴き取り能力を磨くにあたり、控えなければいけないことが一つあります。それは手話、指文字への依存です。手指法に頼り過ぎるような場合、脳レベルで聴き取り能力が低く停滞してしまう恐れがあります。人間は言葉を、耳ではなく、「脳で聴く」のです。脳の可塑性に関わることですが、幼児期に話者の手や指の動きを「読む」ことが習慣となっていると、脳の聴覚に関わる細胞が退縮するとも言われています。
残存聴力の活用には「裸耳での聴き取り訓練」が大切と言えるかもしれません。可能な限り聴き取り感覚を磨き上げるよう、日頃から心がけることが大切です。補聴器をはずした耳に手のひらを添えて、聾児に単語や短い文章を聴き取らせるなどの練習も効果的です。
聴き取り訓練を重ねても、器質的に耳が治るわけではありません。しかし、訓練を続けていると、不十分な音声情報ながら言葉を理解する能力が身についてきます。残存聴力の活用では、子ども自身が、幼児期に、限られた周波数帯域で独自の聴き取りシステムを脳に構築することが重要です。